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この奇妙な世界へやってきたときは六人だった。 そして現在、この部屋にはひとり入れ替わって人数だけははじまりと同じ六人が集まっている。 彼らはベッドに腰をおろしている兵部を取り囲むようにして立っていた。 「ねえ、皆本さん呼んできた方がいいんじゃないの」 紫穂が賢木の袖を引っ張る。 「でもうちらが全員二階に上がったら変に思われへん?」 「確かに。それよりも……」 右のてのひらで額を覆っていた兵部は顔を上げた。 「薫は僕らに接触しても、普通に他の連中との繋がりを絶たれなかった。真木の場合と違うのが気になるな」 「俺だけおかしかったのでしょうか」 真木が、兵部と接触した後薫たちから存在を忘れられた、という話に賢木たちは怪訝な表情で首を傾げた。 「言われてみれば変だよな。夕飯の支度は野郎三人でしようぜって決めたってのに真木がいないことに気付かなかった。人数は三人ってちゃんと理解しているのにな」 矛盾していることに気付かない矛盾。 夢の中であると思えばそう不思議なことでもないが、あいにく彼らには現実と見分けがつかないほどリアルに呼吸している。 「とりあえず、方向性をある程度決めてから後でこっそり皆本に報告した方がいいかもしれないな。そろそろ呼びに来るかも」 「来るかな?」 「え?」 ふいに兵部が割って入った。 「どういうこと?」 「いや……。だって薫が僕らを見つけたのは偶然だろう?僕たちを探しにきたわけじゃない。紫穂と葵は薫を探していたんだし、そっちのヤブ医者だってそうだ。誰も真木がいなくなったことに気付いて探した結果の合流ではない」 ヤブ医者はよけいだ、と賢木は渋い顔をする。 「つまり?」 「つまり……もしかすると階下では、俺たちがいないことに気付かず、三人仲良くお食事中の可能性もあるってことだな」 「見てくる!」 慌てて部屋を出ようとする薫の腕をがっしと掴んで引きとめる。 「だからここでいったん整理しておいた方がいいって」 「でも先生……」 チルドレンたちが、皆本を心配するように顔を曇らせた。 「だいたい兵部、おまえがすべての原因だろうが。なんとかしろよ」 「そんなこと言われてもさあ」 「とりあえずこれまで何が起こったのか情報を共有するのが先ね」 もっともらしく紫穂が言って、それぞれの出来事を端的にまとめることにした。 「まず京介の夢?の中に私たち六人が取り込まれたんだよね。そこで子供時代の京介とばあちゃんに会ってここへきた」 この時点では、誰もがこの状況に困惑し混乱したはずだった。 「気が付いたら少佐がいて、俺とコンタクトできた。だが少佐と話せるようになったとたん今度はおまえたちとの世界が途切れた。仕方なく少佐と二階へあがってこの部屋を物色し、下へ戻ろうとしたところで少佐の具合が悪くなりそこへクイーンが現れ接触に成功した」 本当はこの世界へ飛ばされたときよりはずっと安心した、とまでは真木は言わなかった。兵部がちらりと真木を見て小さくうなずく。 「真木とふたりで話してたんだよね。もしかしたらみんながここへ取り込まれたのは、僕が無意識のうちに何か見せたいものがあるからじゃないかって。ただの推測だけど」 この時代、この時間に引き込まれたことに意味があると考えた。 ただ、と真木は思う。 全員が全員に関係しているとは限らない。思えば、賢木などは兵部とそれほど接点はないし、紫穂や葵は薫ほど兵部と親しくない。関係がありそうなのといえば皆本と薫くらいだろうか。 (俺も、か?) 「そういえば皆本のやつ、なんか違和感がある、てしきりに奇妙なもやもやを気にしてたな。俺はそのとき全く気付かなかったが、あいつは真木がいない矛盾に薄々感づいていたのかもしれないな」 「それを言うと私もだね。だから先生たちのところに言いに行ったんだ。それで、顔色悪いし二階でちょっと休んだら、て言われたから」 ちょうど子供の兵部と皆本たちの会話が聞こえてきたのだった。 だが薫は言いだせなかった。 これから来る客が、兵部を撃った張本人であることは隠しておいた方がいいと思ったのだ。 背筋がぞくりとする。 そうだ、客はどうなったのだろう。 「上にのぼろうとしたら京介と真木さんがいて、皆本たちを呼んできてって言われたから戻ったんだけど……やっぱり気分が悪くなっちゃって」 薫は迷った。今ここで隠し事をするのは得策ではない。全員で情報を共有して、早くここから抜け出さなければならない。だが来客の話をすれば、必然的に超能部隊隊長の話になる。薫はじっとこちらを見つめている兵部を見て、すぐに視線をそらした。 「薫ちゃん?」 「うん……」 曖昧にうなずいて賢木を見る。 だが彼はこれから来るはずの客が兵部を撃った男だということを知らない。ここでその話をいきなり始めるわけがない。 「私たちはなかなか薫ちゃんが戻ってこないから見に行こうとしたのよね。そしたら薫ちゃんが具合悪そうにしていて、二階で休もうって言ってたらちょうど先生がきたから」 そうしてようやく、皆本をのぞく全員がここに集合した。 PR |
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