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誰かが誰かを発見することで世界が繋がる。
ふいに、真木はそんなフレーズを思い浮かべた。 声に乗せてみるとしっくりくる。 そうだ、自分が最初に兵部に気付き、薫が自分と兵部に気付き、彼女を厨房で皆本が見つけ、また紫穂と葵が発見し、そこへ賢木が居合わせた。 「もしかして……」 「ん?」 ぼそりと呟いた真木の声を拾って、兵部が促す。 「なに?」 「いえ……。やっぱり誰か下へ降りて皆本に俺たちを気付かせた方がいいでしょう。気付けばその時点で全員と繋がる」 「やっぱりそう思う?」 兵部も薄々感づいていたようだった。 「どうしたの?」 細かく説明してもわけが分からない。真木はもう一度繰り返した。 「誰かが誰かを見つけることで互いの存在を確認しあい世界が繋がる、ということだ。ここはそういうところだ。クイーンに対しては、皆本もそっちのふたりも、両方その存在をすぐに認めたから両方と繋がった」 やはり普段から繋がりの深い関係の間では、そう簡単に途切れないということだろうか。 もし階段で兵部と一緒にいたとき、自分だけ別行動をとっていたと仮定すれば、兵部を発見した薫は真木個人とは繋がらなかったかもしれない。そう考えるとせっかく会話ができるようになった兵部と再び切断されていたかもしれず、真木はぞっとした。 そういった漠然とした考えを端的に説明して、ここにいる六人は薫と兵部の存在がふたつのグループを繋いでいることになるだのだろうと遠まわしに言った。そしてその繋がりが途切れたとき、すぐに修復するのかどうか分からないという懸念も。 「じゃあ僕と薫が皆本を迎えに行けばいいのかな?」 「それが一番手っ取り早いよね」 「しかし……」 兵部の体調を心配して眉間に深く皺を刻む。 「大丈夫だよ。たぶん」 「うん。私がついてるから!」 「はは。頼もしいこった」 さきほどまでの顔色の悪さを感じさせない、薫の力強いせりふに、賢木は苦笑した。 やまないチャイムに、だが皆本は苛立ちを覚えなかった。 ただ、ああ出なきゃ、とだけ思う。 そういえばなぜ食堂にいるふたりは気付かないのだろうか。それにこう何度もチャイムを鳴らして気付かれていないのを知ったなら、勝手口から入ってくるのではなかっただろうか? やれやれ、と思っているところにぺたぺたとふたりぶんの足音が聞こえて振り返る。 「皆本!」 「あ……薫。え、兵部?なんで……?」 繋がった。 薫と兵部がほっと胸をなでおろすのもつかの間、ひどい嘔吐感に違う意味で胸をつかんでうめく。 「気持ち悪い……なにこれ。さっきのだ」 「ああもう、なんだってこんな。……え?」 はっとして兵部が蒼ざめた顔を上げて玄関の方を注視した。 「ごめんください」 声がする。 「……嘘だ」 漏れる声は掠れて、すぐ隣りにいる薫にだけ届く。 「ねえ、やめようよ。皆本、早く来て」 「待ってくれ。そこでふたりとも待ってて。お客さん来たから」 「なんで皆本が出なきゃいけないの!?おかしいよ、早く行こう」 気分が悪い。めまいがする。 (なんだ、これ) 兵部がたまらず廊下に膝をつく。 悪い夢なら何百回と見てきた。だがこれはあまりにも。 「少佐!」 後ろで真木の声がした。どうにも心配になってついてきたのだろう。しゃがみこんでいる兵部を見つけて慌てて駆け寄ってくる。 「ごめんください、誰かいませんか」 男の柔らかい声にぎょっとして真木が兵部の背中をさする手を止めた。 「はいはーい」 「皆本!」 薫が皆本の腕を引っ張ろうとして、手が空を切る。 一瞬チャイムの音が途切れた。 がちゃりと、ドアノブをまわす音が響く。 「京介くん、そこにいるんだね?」 PR |
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