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困ったことになった。 パティは顔には出さず、だが腹の中では頭を抱えてうずくまりたいほどに困っていた。 今日はいつも買っているコミックスの新刊発売日である。 ジャンルはBL。だがBLとは言え、ありがちな、内容の薄っぺらいただエロエロしいものではない。 むろんそういうのもアリだとは思うが、パティにとってBLはストーリーが重要だと常々思っている。 現在はまっているこの漫画も、友情から愛情が芽生えそれに葛藤して乗り越えていくシーンを切なく、かつコミカルに描く傑作だと言って過言ではない。むしろBLというジャンルを超えた少女マンガの極みと言ってもいい。 ともかく彼女はその新刊を待ち焦がれ、ようやく本屋が開店する時間の30分前に部屋を出たのだったが。 「よ、パティ」 緩い口調で片手を上げながら近づいてきたのは藤浦葉であった。 兵部少佐の幹部のひとりで、どちらかというととっつきにくい(本当はそうではないと最近ようやく気付いた)真木や、女性として憧れはあるもののあまりプライベートな付き合いはない紅葉よりはずっと身近な存在だった。 以前能力が暴走して現在位置さえ特定できない場所へバベルのヤブ医者らと飛ばされたとき、ふたりきり(正確には違うが)で敵と向かい合っていた、というのもあるのかもしれない。 趣味のせいで何かと部屋にこもりがちなパティをちょっぴり心配してくれているのも彼だ。 いつも部屋にこもって何をしているんだ、と聞かれても、答えられないのが心苦しいところである。 さて、そんな葉が珍しく朝早くに廊下を歩いているものだから、パティは一瞬反応が遅れてぼんやりと見上げてしまった。 立ち尽くしているパティを不思議そうに見下ろして、首を傾げる。 「どうした?もしかして徹夜かあ?」 「いえ・・・今日は違います」 「今日は?」 いつも夜更かししてるのかよ、とあまり考えていない様子で呆れたように笑う。 「先輩こそ早いですね」 「まあな、いやちょっと少佐のお遊びに付き合ってたら寝られなくなってさ」 (・・・・!!一体何を・・・) ふたりきりで一夜をともに過ごしたのかしらキャァァ、とテンションが急上昇したが、必死でこらえて、曖昧にうなずいた。 「なんで笑ってるんだ」 「笑ってません」 バレていた。 「それよりこんな早くにどこ行くんだ?」 早く、と言ってももう9時半を過ぎているが、夜型の葉にとっては早朝なのだ。 「いえ、ちょっと本を買いに・・・」 「え、じゃあ俺も行く」 「え?」 「だって今日サムデーの発売日だもんよ。ほら行こうぜ」 「あ、」 パティの返事も聞かずに葉はさっさと歩きだしてしまった。 ここで自分だけ違う場所へ向かうのも変だろう。 隙を見てさっと買えばいいか、とパティは慌てて彼を追いかけた。 小走りに追いついてきたパティを振り返って、葉はにやっと笑う。 「まるでデートみたいじゃん?」 「え?」 思わず足を止める。 そんなフラグは予測していない! PR |
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