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書店へ入ってすぐ葉とは別行動をとったパティは、目当ての漫画を買うと葉の姿を探した。
漫画はきっちりカバーをつけてもらい袋に入れて、それをバッグに突っ込んである。間違っても見られる心配はないだろう。 こういうとき、同行者が葉で本当に良かったと思う。これが兵部なら隠しきれるはずがない。だから、たまに兵部に一緒に買い物に行くと言われても半泣きでその場から逃げ出すしかないのだ。 さて、先輩はどこへ行ったのだろう、とうろうろしていると、やがて雑誌を立ち読みしている葉を見つけた。周囲は男性ばかりで明らかに若い乙女が近づきがたい雰囲気である。が、もちろんパティはそんなことは気にしない。 「何読んでるんですか」 「うわっ」 不意打ちを食らったように葉が声を上げた。 慌てて閉じた雑誌の表紙にはグラビアアイドルが水着でポーズをとっている。 (あれは・・・確かクイーンの姉) そういえば葉はやたらそのモデルがお気に入りのようで、以前写真集をへらへらしながら眺めている場面に遭遇したことがある。 パティは何だかむっとするのを自覚した。 「あー。ちょっと待ってくれ。どうすっかな、これ買うか買わざるべきか」 うなりながら葉がぱらぱらと雑誌をめくる。 彼は脇にサムデーを抱えていた。 「うーん。買うほどでもねえかなー」 「あの」 「ん?」 「買うほどでもないなら立ち読みしていけばいいと思います。そのサムデー、私買ってきますから」 「そうか?悪いな」 葉は嬉しそうに笑みを浮かべると、パティにサムデーと財布を渡した。 いそいそと雑誌を読み始める彼を一瞬冷やかに見てからパティはサムデーを持ってきびすを返す。 向かった先はレジ、ではなく、書店の奥だ。さきほど立ち寄ったBLコーナーのさらに先。そこは女性向け同人誌コーナーである。 迷わず、その異様にピンク色をしたオーラ漂う場所へ立ち入ると、パティはとある棚の前で立ち止った。 見上げる先には「新刊!」と書かれたポップと、パティが委託している同人誌が置かれていた。 自分の同人誌を書店で見かけることほど恥ずかしいものはないが、そんなことは言っていられない。 パティはそれをさっと掴むと、もう一度棚を見上げた。 彼女がこの書店にひっそり卸している同人誌は現在二冊。さて、どうするか。 「真木兵か・・・それとも真木葉?真木兵はこのカプオンリーだけど真木葉は葉兵も入ってるし、やっぱりこっち?」 ぶつぶつ呟いて、やがて決心したようにパティはもう一冊の方を手に取った。 真木葉兵本である。 パティは同人誌とサムデーを一緒にレジに出し、一緒に袋に入れてもらった。 振り返って周囲を見渡すと、立ち読みを終えた葉がひらひら手を振りながら近づいてくるところだった。 「よ。悪いな」 「いえ。どうぞ」 「サンキュー」 葉は何の疑いもなく、サムデーと、同人誌が入った袋を受け取る。 「ついでにどっかで飯でも食って帰るか」 「そうですね」 でも袋を開けるのは部屋に戻ってからにしてくださいね、と念のために忠告して、パティはうっすらと笑った。 アイドルになんぞ負けてたまるか。 そんなものよりもっと萌える対象がすぐ近くにいるではないか、とパティは思うのであった。 PR |
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