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「と言うわけで、今から流しそうめん大会をやろうと思う」
「・・・はあ?」 急に手の空いているメンバー全員をデッキに集めたかと思うとそんなことを言い出した兵部に、真木をはじめとする者たちは一斉に声を上げた。 意味が分からない。 兵部の突拍子もない行動はいつものことだが、それに輪をかけて今回は意味不明である。 唖然としたまま突っ立っている真木らに、兵部は片目を細めるとやや不満そうに言った。 「なんだよ」 「いや、あのさ少佐。今なんて言った?」 おそるおそる手を上げる葉を馬鹿にしたように、兵部は肩をすくめた。 「おや、君はもう耳が遠くなったのかい?仕方ないなあ。流しそうめんだよ流しそうめん。夏と言えば海に花火に流しそうめんだろ?」 そうか? 全員が疑問に思ったが、兵部に最も近しい者ら以外の連中は兵部に異を唱えるなど言語道断、という実に逃げ場の持たない方針でもって行動しているので、突っ込みたいのをぐっとこらえて沈黙した。 「少佐。お言葉ですが流しそうめんをここでやるのは無理ですよ。人数的な問題もありますし、そもそもどこからどこへ流すんですか?」 「え。子供たちを中心に呼んでやるんだよ。別に全員参加とは言わないし。場所はほら、流れるプールとか」 「却下!あんたそんなもの子供たちに食べさせる気ですか!」 想像すると別の意味で胃が痛くなってきた。 「だいたい、海に花火ときたら次は普通にバーベキューじゃないの?」 「あ、そうそう。この間本でBBQって書いてあってなんの暗号かと思ったらバーベキューのことだったんだな。あれはびっくりしたよ。女子高生をJKって略すようなもんかな?」 「話をそらさないで下さい。あとどこでそんな知識を仕入れてきたんですか」 普段、日常生活において女子高生をJKと呼ぶ人など真木は見たこともないのだが。 「えっと、動画の・・・」 「あああもういい。分かった。それで、どうする真木さん?」 嬉々として何やら語りたそうな顔をした兵部の言葉をさえぎって、葉が真木を見た。 どうせ一度兵部がやると言ったら結局やる羽目になるのだろう。 わがままで大人げない人間が権力を握ると部下が大変な目に合う良い例である。 悪気がないだけまだましか。 「ううん。仕方ない。それでは少佐、軽井沢の別荘でやりましょう。子供たちを中心に、あとは保護者を集めてせいぜい二、三十人といったところですね」 「うん何でもいいよ」 自分がやりたいだけらしい。 「では明日、軽井沢のアジトで流しそうめん大会を実施する。紅葉は子供たちに連絡を。葉はコレミツたちと打ち合わせ。俺は行動予定表を作成して今日の夜までに参加者名簿と一緒に配布する。以上だ」 「うわあ」 つい数分前まで嫌そうな顔をしていた割に、真木さんノリノリである。 一度やると決めたらとことんやらなければ気が済まない、苦労性なのだろう。 「楽しみだね」 自分は何も仕事を割り当てられなかったので、兵部はくすくす笑いながら成り行きを見守ることにした。 「よし、まずは竹を伐採してくる!」 「あ、ちょっと」 百貨店などで売られているだろういわゆる子供だましな「流しそうめんセット」でいいじゃん、と思った葉が止める間もなく、真木は翼を広げて飛び立ってしまった。 「・・・本気だ」 「・・・本気でやる気ね」 「真木!ついでに花火もな!」 手を振りながら叫ぶ兵部に、真木は遠くから手を振り返した。 パンドラの夏、流しそうめんの夏。 今日も明日も犯罪エスパー集団パンドラは平和である。 PR |
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