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「ほらほら、あれだよあの黒いやつ」 「それだけじゃ分かんないっすよ」 「あの~ほら、ええっとなんて言ったっけ」 「もうボケたんすか。ジジィだから仕方ないか」 「誰がジジィだこら!ほら、あのもしゃっとした」 「えーと、真木さんの髪の毛みたいな?」 「う、うーん・・・。もっと短くてさ、黒くて」 「陰毛?」 「ちげーよ!下品なこと言うな」 「何だよもー。黒くて短くてもしゃっとしてるものってもう髪の毛とかアソコの毛とか脇毛とかしか思い浮かばねーよ」 「全部毛じゃないか!毛から離れろ!食べモノだぞ!」 「え?それ先に言ってくれよ。黒くて短くてもしゃっとしている食べ物?何それ」 「だから出てこないんだってば名前が……」 ふたりで毛だのなんだのと言い合いしているのを、微妙な顔で観察していた紅葉たちだったが、やがていい加減我慢ができなくなったのか、知らん顔でPCに向かっていた真木が立ち上がった。 「ふたりとも。さっきから何を言ってるんですか」 「真木さーん。どうにかしてくれよ。少佐がまーた訳分かんないこと言いだしてさ」 「人をボケ老人みたいに言うなよ!」 かっとして拳を振り上げた兵部の手を、真木が背後から掴んだ。 「いい加減にして下さい大人げない。それより何の話です」 「だからさー。名前が出てこないんだよ。黒くて短くてもしゃっとしてるあれ」 「もうちょっと具体的にお願いします」 「うーん。たまに大豆とか入ってる」 「は?料理名かよ」 「食べるときは大体そうなんだよ。何だっけ……。ああもう気持ち悪いな!」 喉元まで出かかっているんだけど、とどうにも落ち着かない様子で、兵部は頭をがしがしとかいた。 ゆっくりと彼の手を放して、真木も考え込む。 「何となく思い当たるものはあるのですが、ぼんやりとしていて……」 「そうなんだよなあ。あれ食べたいから作ってくれって真木に言おうとしたんだけどなあ」 「ダメだ、俺の頭の中は毛でいっぱいだ」 いやな脳内である。 「どんな味つけなんです?」 「え、そんなの分からないよ。料理なんかしないもん」 「甘いとか辛いとか酸っぱいとか」 「甘い……ような。何味なんだろあれ。言われてみれば味が分からない」 「……少佐………」 日々兵部のためにあれこれと手間と上質の食材を惜しまず作っているのに、ひどすぎる。 がっくりと肩を落とす真木を無視して、兵部はだらしなくソファの背もたれに力を預けるとずるずると下半身を床に落としていった。 「あー何だっけ。気になって眠れそうにない」 「俺も……」 「何々ですかいったい……」 葉と真木もうなだれる。 紅葉は突っ込みたくてイライラしたが、三人の疲れたような顔がおもしろかったので、答えを提供するのはもう少し後にしようと思った。 PR |
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